「ばるな」特等乗船記:乗船日1999年10月11〜12日
「すいせん」スイート乗船記:乗船日1999年10月12日〜13日
ばるな(東日本フェリー)
1998.11.3就航 13,700トン 速力24.0ノット 旅客定員630名
直江津23:55 〜 17:25岩内 721km 17時間30分
久々に船に乗る機会を持つことができました。今回は富山で3時間ほどの用事があり、そのまま大阪に帰るのではなく、ちょっと・・・どころでなく、大幅に遠回りし、直江津〜岩内の「ばるな」、そして小樽〜敦賀の「すずらん」で帰ろうという企画です。
京都を朝の雷鳥で出て、用事が済んで富山駅に戻ったのが午後4時半頃。富山から直江津までは鈍行でも2時間ですから、23:55発のばるなに乗るには時間があまりすぎ。まずはその間の模様からアップします。もっぱら食べ物情報(^_^)
朝は京都で昼食用の駅弁を仕入れました。京都の駅弁なら萩の家に限るということなんですが、朝ということでまだ種類が揃ってなくて、精進弁当と鯖寿司を調達。(裏情報:でも、大阪から乗っていたら、大阪で仕入れるのが正解でしょうね。萩の家がまずいってことではないんですけれども・・・)
さて、用事も済んで、富山は寿司で有名なところですが、残念ながら時間が早すぎて普通の寿司屋は開いていません。地元の人から駅ビル3階のレストラン街の寿司屋もソコソコという情報を仕入れて向かいました。カウンターで単品注文したときの値段が出ていないという怖〜い状態でしたけれども(普通のセットものはメニューがある)、目の前の冷蔵ケースに並んでいたプリプリした甘エビは絶品、そして、旬の鯖にぎりも鯖の〆め加減が絶妙。さすがに寿司屋の仕事です。(裏情
報:富山の人に言わせると寿司は金沢の方が職人がいいそうです。)
次に向かったのは糸魚川。鈍行で1時間ちょっとです。実は糸魚川においしい蕎麦屋があるという情報が・・・。駅前のアーケードを進んで、大きな蕎麦屋のあるT字の信号交差点を左にまがってすぐ、泉屋という小さなお蕎麦屋さんでしたが、残念ながら7時にすでに閉店していました。その大きい方の蕎麦屋もソコソコと聞いていたのでそちらに入りました。蕎麦の味と値段を比べたコスパフォがすごい(つまり安い!)。ただ、やっぱり麺類はダシが決め手……というのは大阪人の弁(^_^)
糸魚川は歴史ある街のようで、閉まっていた蕎麦屋さんのある通りは木造のアーケードで統一し、町並み保存の意気込みが感じられました。こんな機会でもなければ、行くこともなかったと、何か得した気分でした。
いよいよ直江津に向かい、ばるな乗船です。
昨年11月就航の新造船でしたので、東日本フェリーの中では一番に乗ってみたいと思っていた船です。販売されている最上級船室は特等でした。
直江津駅は到着は夜9時を回っていて、街は寝ていました。フェリーターミナルに行くバス便もない様子でしたので、タクシーで向かいます。ターミナルに着いてみると、10時半から乗船開始とのこと、ちょっと疲れていましたので、早く船内に入れるのには救われました。
ターミナルから巨大な「ばるな」を見ても、ボーディング・ブリッジやタラップはありません。どうやって乗船するのかと思っていたら、何と船腹の一番底の長方形のドアのようなものが手前に開いて来て、それに10段くらいの階段がついているのでした。びっくりして船の人に尋ねると、直江津港だけはこうやって乗船するんだそうです。長い船内エスカレータを2つ上がって、エントランスホールです。
部屋に入って船の案内を見ていると、特等の他に特別室があります。案内所に部屋変更の交渉をしてみましたが、「オーナーズルームなので、私どもでは販売できません」。翌日、ブリッジ見学を頼んだときも、「あらかじめ予約していただかないとできません」。う〜ん、イケ好かない会社だ。実は「ばるな」がとっても良ければ往復乗船も考えていたのですが、やはり当初予定どおりに新日本海フェリーで帰ることにしました。
船室は10畳ほど。設備は、ユニットのバス・トイレ・洗面、冷蔵庫、テレビ。ゆかたに羽織がついていたのが、いかにも北の航路らしいところ。アメニティは、せっけん、歯ブラシの他、シャンプー、リンス、カミソリがありました。セミダブルベッド2つ(毛布と布団)、チェア2つ、小さいテーブル。空調は一括で個別調節はできませんでした。
レストランは、これまでに乗った船の中では天井が高いなどインテリアが一番素敵でした。注文を聞いてから作って、テーブルまで持って来てくれます。ただ、定食類だとどれも1000円を超えるし(朝食も昼食も)、ラーメン単品でも700円くらいだったと思いますので、安く満腹する手段がありません。味は普通。朝食は朝7時〜10時、昼食は12時〜15時と営業時間が長く、レストラン閉店時は喫茶の方が開いていたので、いつでも何か食べられます。
その他の船内設備は、最近の豪華フェリーと大差ありませんが、パブリックな展望室がないのが不思議な気がしました(日本海側航路は見るものがないからかも)。展望風呂は気泡風呂とジェット風呂。脱衣場に白いプラスチックのデッキチェアが4つあったのがよいアイデアかなと思いましたが、利用している人は見ませんでした。
船内配置がちょっと変わっていて、3層のうち、最上階がレストラン、真ん中の階は窓側が特等、この階の後部に浴場、一番下の窓側が一等という感じでした(持ち帰れるデッキプランがなかったので、記憶があいまい)。レストランや浴場に行こうと思うと、つい下へ向かいたくなるので、何回も間違えてしまいました (^_^;;;
日本海は瀬戸内海や太平洋航路と違って、ほとんど他の船に遭遇しませんでした。直江津港出航直後に漁船が見えたのと、奥尻島と北海道の間で少し船が見えた程度。その中で秋田沖あたり、新日本海フェリーの新潟〜小樽航路の船(日本最大のフェリーである「あざれあ」か「しらかば」)とすれ違ったのが印象的でした。
船客はたまたま100名の団体がいましたので、その他の徒歩乗船客数名と車で乗船した人、合わせて150名くらいでした。乗組員は27名だそうです。
夕刻、岩内港に定時到着。多分直江津もそうだったのでしょうけれども(夜なのでよく分かりませんでしたが)、まだ完全に暮れ切っていない岩内港は何とも殺風景なところ。ボーディングブリッジを備えたターミナルビルがポツンとあるだけです。乗船前から岩内から先の連絡について尋ねていましたが、連絡バスがありますという情報のみ。下船時にも特に案内はなく、ターミナルのカウンタで聞いてようやく17:50にバスが来ることが分かりました。
こんなところにバスが来るのかと思って、しばし待っていると、闇の中にやや遅れてバスの姿が。路線バスでした。乗車時に札幌に行きますかと運転手さんに尋ねられて、何かと思っていたら、しばらくして「3名(つまり船を降りてバスを利用した全員)が札幌行きに乗る」とどこかに連絡しています。岩内バスターミナルには、すでにたくさんの乗客が乗っている札幌行き急行バスが待っていて、私たちが乗り込むとすぐに発車しました。
(「すいせん」乗船記に続く)
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総合印象:ハードとしての船は素晴らしいけれども、ソフト面では掃除が行き届いていない、人の対応が素っけない、などなど、また乗りたいと思わせる要素がなくて残念でした。
(1999年10月18日初稿、2000年1月14日加筆修正)
すいせん(新日本海フェリー)
1996.6.11就航 17,329トン 速力29.4ノット 旅客定員507名
小樽 23:30 〜 20:30 敦賀 1024km 18時間
岩内バスターミナルを出たバスは、山を超え、夜の闇をひたすら走ること約1時間20分、街の明かりが見えてきたら、小樽でした。バスの運転手さんに「小樽で夕食しようと思うんですけど、どこで降りたらいいでしょうか」と聞いて、JR小樽駅ではなく、小樽寿司屋街に近いという公園通りで降りました。ぶらぶら歩きながら公園通りの店を覗いてみるも、あまりお客が入っていません。ただ1件、地元とおぼしき人がカウンタに座っていた店があって、そこに決めました。これが大正解。魚屋直営の「魚一心」という店で、お通しが何とカニ半身! あわびの造り2個1500円! 満腹したうえに、夜食用に銀タラ味噌漬けの焼いたの2個とおにぎり2個を包んでもらっても2人で6000円でした! でも一皿の分量が多すぎるのよねぇ。もっといろいろ食べたかったのに……
その後、有名な運河の倉庫まで腹ごなしの散歩。途中、バスの運転手さんが言っていた寿司屋街を通りました。でも、こちらはどうやら観光客相手の様子。あんまり期待できないかも知れません。それに北海道はお米が駄目と、あとでタクシーの運転手さんが言っていました。
倉庫群の端からタクシーに乗り、レトロな建物がある通りをまわってフェリー乗り場に行くように頼んだら、これがまたヒットで、観光案内がとっても楽しい運転手さんでした。小樽の街は、昼間にみても薄汚くて、夜のライトアップを見る方が綺麗なんだそうです(^_^)
小樽のフェリーターミナルは、コンテナやトラックでいっぱいでした。船が見えても、乗船口までの通路と平行にだいぶ走って、ここを歩いて戻るのはしんどいなぁと内心思いながら、立派なターミナルビルに到着しました。
このビルは、文章ではちょっと表わしにくい独特な格好で、最上階には小樽市街を見渡せる展望風呂があるとか。時間が遅かったので営業はしてませんでしたけれど。長距離フェリーのターミナルとしては、今までで一番豪華な建物です。
船の模型などが展示された待合室でしばらく待っていると、22:45に乗船開始になりました。ターミナルビルから乗船口まで、外から見るとうんざりするほど長い通路は、ムービング・ウォークがあり、ほとんど歩く必要はありませんでした。やれやれです。
ボーディング・ブリッジから直接エントランス・ホールに乗り込めます。3層吹き抜けのホールは、豪華フェリーと言われている船の中でも、また一段と豪華な感じ。鍵を受け取って、一番上に向かいました。
スイートルームは特等スペースを抜けて、ブリッジのすぐ後ろの独立した区画に4部屋ありました。私たちの入った003号室は、内装がすべてペールグリーンで、まるで青虫部屋・・・。写真で見ると「すずらん」の方には真っ赤な部屋もあるようで、長時間過ごす際の心理的快適さが考えられていないとちょっとがっかりしました。後で他の部屋を見せてもらったら、ピンク・ベージュの部屋もあったので、もし次に乗る機会があったら、部屋の位置(陸地側の左舷を指定した)ではなくて、部屋の色を指定しないと。
部屋は40畳くらいとフェリーでは最大級の広さ。テレビ、冷蔵庫、案内所に通じるインターホン、90センチ角くらいの書き物のできる机、半円形の大きなソファと1人用ソファ1個、セミダブルベッド2台(これがくっつけて置いてあるので、船内図を見たときはほんとのダブルベッドかと思っていました)。空調は個別調節可能。サニタリーは、ユニットではなくて、浴室、洗面、トイレが独立しています。ドライヤーはありましたが、アメニティは石鹸と歯ブラシのみ。寝具は毛布のみ。日本人感覚だと、掛け布団がないというのはどうも落ち着きません。あと、ゆかたとバスローブ。
冷蔵庫の中はご自由にお飲みくださいということでしたが、ミネラルウォーター、きりり、緑茶が各1本でした(笑)。部屋に入ったら、すでに湯沸かしポットにお湯が湧いていました。ターミナルから見たとき、右舷側のスイートに電気がついていて、あれ?と思ったんですけれども(この日はスイートにもう1組お客がいました!)、こうやって準備をして、電気もつけて暖かく迎えよういう心が感じ取れるのが嬉しいです。ほんとにちょっとしたことですけれども。コーヒーパック4個、紅茶パック4個、緑茶パック多数が用意され、すぐに暖かい飲み物でくつろぐことができました。
エントランスホールには、客室部分の3つの階を移動できるエレベータがあり、船内は完全にフラット、パブリック部分には身障者用トイレも備えていて、バリアフリーが行き届いていました。特にスイートはサニタリー部分も含めて、室内に一切段差がありませんでした。特等洋室はユニットバスだと思うので、その部分のみ段差があるかも知れませんが。
レストランは真ん中のフロアの後ろの方、開店時間が短いので、必ず時間に食べないと食べ損ってしまうのが難点です。カフェテリア方式で、たとえば、ラーメンとミニ・カルビ丼というようなセットが780円。アラカルトもちゃんと調理されたものがいろいろ出ていて、楽しく食事できました。さんま竜田揚げ、ビーフシチュー、鯖味噌煮が、食べた中でのベストスリーです(^_^)。ラーメンは焼麩が入っているのが北海道らしいところでした。ただ、振動がひどいのと、全席禁煙なので、あまり長居ができません。
展望風呂は一番下のフロアの後ろ、珍しく男女とも左舷側に並んで配置されていました。お風呂には特に設備はなくて、大きい湯船がど〜んと。でも、窓が低いので、ゆっくりつかりながら海を見ることができます。敦賀から小樽への逆コースなら、夕日が綺麗なことでしょう。ここにも、ドライヤーはありましたが、石鹸しかありませんでした。
スポーツサウナは時間を限ってオープンしていたようですけれども、後部外甲板のジャグジーはカバーをかけてすでに冬眠していました。
某所で見たすいせん乗船記で振動がひどいとあったので、ばるな往復も考えていましたが、すいせんのスイートは、ブリッジのすぐ後ろという位置のせいか、船室はいたって静か、そして海も穏やかで熟睡。6時頃目覚めたら、ちょうど綺麗な日の出を見ることができました。もっとも、水平線を出た太陽はすぐにまた雲に隠れてしまいましたが。その後、小さな気圧の谷が通過するということで揺れを覚悟したものの、思ったほどには揺れませんでした。フェリー最上級船室乗船の旅も多分10回目くらいになると思うのですが、天候にはいつも恵まれています。
持ち込んだお弁当で朝食を取り、部屋でくつろいでいると、9時半頃、「間もなく姉妹船の『すずらん』とすれ違います」という放送が入りました。右舷が見えるレストラン横のプロムナードまで急いで出て、持参の双眼鏡ですれ違いを楽しみました。その後、お風呂に行き、船内探検をして部屋に戻ると、案内所から電話で「ブリッジ見学なさいますか」とのこと。11時に部屋に迎えに来てくれた笑顔の素敵な女性乗務員に尋ねると、「スイートのお客様だけ、特にご案内しています」ということでした。
普段は鍵のかかったドアの向こうに行くだけで、もうブリッジです。当直の航海士さん、甲板員さん、そして船長さんの3名が迎えてくれました。そして、すぐに記念写真の撮影。制服を着せられ、帽子をかぶせられて、案内の女性がポラロイドカメラで撮り、ちゃんとケースに入れたものに船長さんがサインしてくださいました。ここまでサービスされたのは初めてで感激です。
普段は航海士、甲板員の2名が3時間交代4直でブリッジにいて、すべてコンピュータ制御の現在、仕事はひたすら見張りだそうです。
この日の船長さんはとっても話好きな方で、ふだんはらいらっくに乗船されているそうですが、最新鋭の船に乗って嬉しくてたまらないというように、懇切丁寧に船の設備について説明してくださいました。レーダーの表示の意味、海図、航路、コンパス、舵、プロペラなどなど・・・。
フィンスタビライザーは格納式で、通常は速度優先で使っていなくて、コンピュータ制御により、舵を揺れを消す方向に切ることで、横揺れを抑えているそうです。
着岸時の操船はジョイスティックを使ったコンピュータ・ゲームのような感じとか。ブリッジの右の端にあり、これは船長自ら行うそうです。
海図は下からライトで現在位置が表示されるような設備の上に置かれていました。これもコンピュータ制御で海図番号を入力するだけだそうです。積丹半島を回ったら、敦賀まで一直線、陸からは100キロも離れたところを航行するという説明がありました。ちなみに水平線まで天気がよくても20キロしか見えないそうなので、航海中、陸地はほとんど見えないそうです。
水についても興味深い話がありました。小樽でも敦賀でも3時間しか停泊しないので、その間に積める量に限りがあるから、1日100トンの水を海水から作る装置を備えているそうです。
この日の乗組員は36名、船客は90名ほど。貨物は満杯だそうで、やはり貨物で稼いでいるのですね。定時運行が大切なお話なども聞くことができました。
楽しくお話を伺っているうちに、20分と言っていたブリッジ見学は50分あまりも経っていて、その間に舞鶴からの「らべんだあ」とすれ違い、ブリッジ備え付けの双眼鏡でじっくりと船姿を見ることもでき、大満足のブリッジ見学でした。
午後8時15分、定刻より少し早く敦賀港に到着。すでにJR敦賀駅への連絡バスが待っていて、数名しかいないバス利用者が乗り込んだのを確認すると、すぐに発車。おかげで予定より1本早い列車で帰途につくことができました。
総合印象:豪華で洗練された感じ。客室、パブリックともに掃除が行き届いているし、客室乗務員の対応も暖かく、気持ちのよい船です。また、機会があったら他の船にも乗ってみたいと思いました。
(1999年10月18日初稿、2000年1月14日修正加筆)